粉じん防爆電動機
粉じん防爆
大切な設備が、万一の爆発事故を起こすと、設備の損害はもちろん、生産ストップ、人命、地域住民への影響、社会的信用問題など、その損失は計り知れないほど大きくなります。
電機品による爆発事故防止のため、安川電機は昭和6年に我が国で最初の防爆試験設備及び試験方法を確立し、昭和8年に国産初の防爆モータを完成して以来、国内の防爆電機品について先導的役割を果たしてきました。80年以上の歴史と伝統により培われた経験と、たゆみない安全性への努力により、高性能、高信頼性の防爆モータとして称賛され、各種産業の災害防止とオートメーションに貢献し数多くの防爆電機品を納入しております。
近年、設備需要の低迷により、その生産も減少し、各社粉じん防爆モータ撤退声明が相次ぐ状況となっておりますが、このような状況の中でも、安川A&Dは粉じん防爆モータをご提供しております。
粉じん防爆とは
粉じんが爆発することは、炭鉱事故がメタンガス以外の要因で発生したことから、約200年前に確認されています。
国内においても過去に多数の死傷者と多額の損害を出しながら、ガス蒸気などに比べ粉じんが身近な物質であることから、一般にその危険性が認識されていませんでした。
近年の技術進捗により、プラントの複雑化と大型化が進み、これに伴って原料・製品を紛体として取り扱う工程も多くなり、火災や爆発の危険性が増加しています。
特に、石炭エネルギーへの切替えに伴う揚炭、石炭受払、石炭粉砕などの設備及び送風設備などに多数の粉じん防爆電動機が使用されています。
電気設備の粉じん防爆対策
粉じんの爆発は、次のような条件が重なった場合に起こります。
- 1) 粉じんが燃焼性である。
- 2) 微粉状態である。
- 3) 空気中に浮遊し濃度が爆発限界内にある。
- 4) 点火源が存在する。
このため、電気設備の粉じん防爆対策としては、次のような処置を講ずる必要があります。
- ・ 危険雰囲気に適応した粉じん防爆構造電気機器の使用と、粉じん防爆電気工事の施工。
- ・ 粉じん雲の生成防止と粉じん漏えい防止。
- ・ 床面、機械上などのたい積粉じんの除去。
- ・ 粉じんによる静電気発生防止。
粉じん防爆構造の種類
粉じん防爆構造の種類は以下に定められています。
区分 |
記号 |
内容 |
特殊防じん防爆構造 |
SDP |
全閉構造で、接合面の奥行を一定値以上にするか、または接合面に一定値以上の奥行をもつパッキンを使用して、粉じんが容器内部に侵入しないようにした構造 |
普通防じん防爆構造 |
DP |
全閉構造で、接合面の奥行を一定値以上にするか、又は接合面にパッキンを使用して、防じんが容器内部に侵入しにくいようにした構造 |
粉じん特殊防爆構造 |
XDP |
上記以外の構造で粉じん防爆性能を有することが、公的機関において試験その他によって確認された構造 |
労働省産業安全研究所「工場電気設備防爆指針「工場電気設備防爆指針(粉じん防爆1982)」より抜粋
※当社では、普通防じん防爆構造(DP)のモータを取り扱っております。
発火度の分類
粉じんの発火度は、発火温度に従って、以下のように3等級に分類されます。
発火度 |
発火温度 |
11 |
270℃を超えるもの |
12 |
200℃を超え 270℃以下のもの |
13 |
150℃を超え 200℃以下のもの |
労働省産業安全研究所「工場電気設備防爆指針「工場電気設備防爆指針(粉じん防爆1982)」より抜粋
※当社では、全ての発火度への対応が可能です。
粉じんの種類
粉じんとは、その性質により以下の2種類に分類されます。
爆燃性粉じん |
空気中の酸素が少ない雰囲気中または二酸化炭素中でも着火し、浮遊状態では激しい爆発を生ずる金属粉じん |
可燃性粉じん |
空気中の酸素と発熱反応を起こし爆発する粉じんをいい、非導電性のものと導電性のものとに分けられる。 |
労働省産業安全研究所「工場電気設備防爆指針「工場電気設備防爆指針(粉じん防爆1982)」より抜粋
※普通防じん防爆構造は、可燃性粉じん環境への適用が可能です。
粉じん防爆構造/発火度と可燃性粉じんの分類(まとめ)
粉じん防爆構造/
発火度 |
可燃性粉じんの分類 |
導電性のあるもの |
非導電性のもの |
DP-11 |
亜鉛、チタン、コークス、
カーボンブラック |
小麦、とうもろこし、砂糖、ゴム、染料、ポリエチレン、フェノール樹脂 |
DP-12 |
鉄、石炭 |
ココア、リグニン、米ぬか |
DP-13 |
|
硫黄 |
労働省産業安全研究所「工場電気設備防爆指針「工場電気設備防爆指針(粉じん防爆1982)」より抜粋
普通粉じん防爆形誘導電動機(試験の概要)
普通粉じん防爆構造電動機の特殊試験
安川電機製防爆モータは、工場電気設備防爆指針及び国内・外規格(JIS、IEC、BSなど)に基づき、モータのあらゆる部分にわたって徹底的に安全性、信頼性を追求するための設備を整え、防爆性に関する安全性を十分に確認してお届けしています。試験の中で特殊試験について以下に表します。
- 1)防じん試験
試験装置内に供試機器を正規の状態に取付け、200メッシュのふるいを通るタルク粉を1m3当たり2kgの割合で供試機器の周囲に連続して浮遊させ、容器内部の圧力を周囲の圧力より200mmH2Oだけ低く保持して、試験後容器内部を点検し、タルク粉が侵入した形跡がないことを確認する。
- 2)温度試験
機器の外面にタルク粉を5mm以上の厚さで付着させ、定格周波数・定格電圧及び定格負荷において温度試験を行い、電気機器を構成するすべての部分の温度上昇はそれぞれの電気機器の一般規格で定められた値以下で、かつ、機器の外面の温度上昇は以下に示す値を超えないことを確認する。
電気機器の容器外面の温度上昇限度
発火度 |
DP-11 |
DP-12 |
DP-13 |
過負荷になる恐れがないもの |
175℃ |
120℃ |
80℃ |
過負荷になる恐れがあるもの |
150℃ |
105℃ |
70℃ |
粉じん防爆に関する規定
法令・規則 |
内容 |
労働安全衛生法
第20条
(事業者の講ずべき装置等) |
業者は、爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。 |
労働安全衛生法
第42条
(譲渡等の制限) |
特定機械等以外の機械等で、危険若しくは有害な作業を必要とするもの、危険な場所において使用するもの又は危険若しくは健康障害を防止するため使用するもののうち、政令で定めるものは、厚生労働大臣が定める規格又は安全装置を具備しなければ、譲渡し、貸与し、又は設置してはならない。 |
労働安全衛生法
第44条
(型式検定) |
第42条の機械等で政令で定めるものを製造し、又は輸入した者は、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣の登録を受けた者が個々に行う当該機械等についての検定を受けなければならない。 |
労働安全衛生規則
第261条
(通風等による爆発又は火災の防止) |
事業者は、引火性のものの蒸気、可燃性ガス又は可燃性の粉じんが存在して爆発又は火災が生じるおそれがある場所については、当該蒸気、ガス又は粉じんによる爆発又は火災を防止するため、通風、換気、除じん等の措置を講じなければならない。 |
労働安全衛生規則
第281条
(可燃性粉じんのある場所で使用する電気機械器具) |
事業者は、第261条の場所のうち、同条の措置を講じても、なお、可燃性の粉じんが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所において電気機械器具を使用するときは、当該粉じんに対し防爆性能を有する防爆構造電気機器器具でなければ、使用してはならない。労働者は、前項の箇所においては、同項の防爆構造電気機器器具以外の電気機器器具を使用してはならない。 |
製作可能範囲
安川モートル製粉じん防爆モータの製作可能範囲については下記をご覧ください。

他社製モータの置き換え対応について
他社製モータの置き換え対応において、多数実績があります。以下に、直近の事例を掲載しております。
納入先 |
用途 |
内容 |
型式 |
容量[kW] |
極数[p] |
電圧[V] |
周波数[Hz] |
A社 |
運炭ベルトコンベア |
既設他社製の
予備モータ |
FEF-C2D |
300 |
6 |
6600 |
50 |
B社 |
破砕機 |
既設他社製の
予備モータ |
FED-C2D |
110 |
6 |
6600 |
50 |
C社 |
運炭ベルトコンベア |
既設インバータ用モータ、および
ユニットの更新 |
FEK-BDI |
75 |
6 |
440 |
60 |
D社 |
運炭ベルトコンベア |
既設他社製の
予備モータ |
FEF-C2D |
110 |
6 |
6600 |
50 |
E社 |
運炭ベルトコンベア |
既設他社製の
予備モータ |
HEF-C2D |
355 |
6 |
6600 |
50 |